自由遊戯黙示録

フリーゲーム/インディーズゲームをディープに語る

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Karoshi:憤死上等

フリーゲームを取り扱った言説では、「商業用ゲームには見られることのない表現が成されている」という点が、フリーゲームの最大の特徴としてよく挙げられている。
そしてその特徴の多くは、ゲームシステムやグラフィック、世界観の独創性として表れる。

しかし時として、時事的な犯罪事件などを題材にした、ある種の社会性を持ちあわせたゲームが作られることがままある。
1995年に発生したオウム真理教による「地下鉄サリン事件」をシミュレートしたゲームや、1999年に米国コロンバイン高校で発生した銃撃事件を題材として物議を醸し出した『Super Columbine Massacre RPG!』などがその代表例と言える。

このような「不謹慎ゲーム」の類は、概ね悪趣味な意図の下で製作されており、当blogで取り上げるには不適切な作品が大半であろう。
だがそうしたゲームの中にも驚くべき作品が潜んでいることもある。


karoshi_00.jpg
Jesse Venbrux『Karoshi』。

『Karoshi』、そう"過労死"である。
一体何故"過労死"なのだろうか?

確かに"Karoshi"は、古くは"Ninja"や"Sushi"、近年なら"Manga"などのように、日本発祥の固有文化として認知され、国際的に通用する単語となっている。
しかし、たとえそのことを念頭においたとしても、"過労死"というネガティブな要素を含む日本語で名付けられたゲームが、日本国外から世に発表されたという、その事象自体がまず、日本人として生まれ育ち、会社勤めをしている筆者にとっては衝撃以外の何物でもなかったのである。


karoshi_01.jpg
・『Karoshi』を開始すると、そこにはスーツ姿のサラリーマンがひとり

さて弱った。
このゲームは一体どんなルールで、先へ進むためには果たして何をすればよいのだろうか?
説明書を見ても操作方法程度の情報しか記載されておらず、全くゲームプレイの参考にならない。
とりあえず画面内のサラリーマンが操作できるようなので、あれこれ操作することにすると…

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・剣山に落っこちてしまった!

karoshi_03.jpg
・あれ、何やら画面が切り替わった…


そう、本作におけるステージクリアの条件とは「サラリーマンを自殺させる事」なのである。
ステージが進むにつれて、スイッチなどのパズル的な要素や、素早いアクションを要求されるシーンが登場し、「如何にしてサラリーマンを自殺へ導くか」に頭を捻ることになる。

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・鉄製コンテナは足場や重しとして使える

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・床にある赤いスイッチは○ブロックを出したり消したりする

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・拳銃を取ると銃弾が撃てるようになる。勿論、自殺用だ


自殺でクリアというエキセントリックなルールとは対照的に、やるべきことはシンプルで、頭脳と反射神経の双方を程よく要求される。
ところが、パズルの完成度の高さに舌鼓を打っているところで、悶絶死しかねないほどに不条理な展開の数々がプレイヤーに襲いかかる。

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・どう考えてもクリア不可能に見える「K」のステージ。一体何をしろと?

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・一見して楽勝そうに見えるが、実は…

『Karoshi』は見た目以上に挑戦的な内容のアクション・パズル・ゲームなのである。


筆者は『Karoshi』をプレイしているうちに、パズルを解くのに知らず知らずのうちにに熱中し、人を食った理不尽な展開に憤慨し、進行に行き詰まり躍起になってWebで攻略方法を漁りだし、そして不意にあるひとつのことに気が付いた。
いや、気が付いてしまった。

自分が、いつの間にか「部下を過労死に追い込む上司」になりきってしまっている、ということに。

本作では、プレイヤーは画面内に存在する無理難題のために、サラリーマンをあの手この手で酷使し、そして遂にはサラリーマンを死に至らせる。
これはひょっとすると、現実社会で起きている過労死の構造、まさにそのものではないだろうか―――
自分が過労死の被害者ではなく、加害者の立場に居るのだという事に気付いた瞬間、言いようの無い空恐ろしさを筆者は感じたのである。

お前は何食わぬ顔で他人を間接的に殺し得るのだ、と。

突きつけられてしまったものは、余りにも重い。


『Karoshi』というゲームの中には、言葉や映像で直接的に社会問題を提示するのではなく、社会問題が発生する仕組みをゲームシステムに置き換えて構築し、プレイヤーにそれを追体験させるという、コンピュータ・ゲームならではの風刺表現が存在している。
センセーショナルな事象の尻馬に乗っただけのものではなく、恒久的な"構造"こそを捉え、再現し、浮き彫りにしているのである。
このような点もまた、コンピュータ・ゲームというメディア、中でもとりわけ自由な表現が活発に行われているフリーゲームの持っている可能性のひとつだと言えるのではないだろうか?


『Karoshi』は全編にシュールさが散りばめられた作品でもある。
本作をプレイした人の中には、そのシュールさを自身とは全く関係のない外部の物として茶化す人もいるだろう。
そして、たかだか1本のコンピュータ・ゲームにここまで想像力を働かせる筆者の事を一笑に伏す人も、きっと居てくれることだろう。

しかしそれでも、筆者には『Karoshi』を笑い飛ばすことは、もう出来なくなってしまったのだ。

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テーマ:無料ゲーム紹介 - ジャンル:ゲーム

  1. 2008/09/24(水) 23:45:17|
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The Spirit Engine:バトル・プレイング・ゲーム

コンピュータ・ロール・プレイング・ゲームの面白さとはなんだろうか?

もしそう問われたときに、あなたなら何と答えるだろうか?

それは個性的な登場人物達が織り成す感動的なストーリィである、と答えるだろうか。
あるいは、迷宮を探索して謎を説き明かし、古代の秘宝や様々な道具を収集する楽しみを唱えるだろうか。

無論それらは、確かにコンピュータRPGの面白さに含まれている大切な要素だが、持ちうる資源と知略を尽くして敵に立ち向かう”戦闘シーン”の存在を欠かす訳にはいかないだろう。
戦闘シーンは数多のCRPGにおいて避けては通れないものであり、各作品が様々に創意工夫を凝らし、それぞれがそれぞれに特徴的な戦闘システムを作り出している。
そしてプレイヤーも、プレイ時間の大半をそうした戦闘シーンに割くことになる。

日本国産CRPGの代表格である『ファイナルファンタジー』シリーズでは、「ジョブチェンジ」システムによって十人十色の戦術を組み立てることのできる第3作目や第5作目の人気や評価が特に高い。
子供達を中心に空前の大ヒットを飛ばした『ポケモン』にしても、「モンスターを捕まえてバトルさせる」ことがゲームの主眼のひとつとなっている。
CRPGにおいて「戦闘が面白い」ことは、その作品のコンピュータ・ゲームとしての善し悪しを決める第一条件だと言っても過言ではないだろう。


ここで、『The Spirit Engine』という1本のCRPGについて述べたいと思う。

『The Spirit Engine』は、海外のフリーウェアゲーム製作集団Natomic Studiosによる作品のひとつで、Mark Pay氏がメイン・デザイナーを務めている。
同ゲームブランドの看板タイトルともいえる大作CRPGだ。

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『The Spirit Engine』は、終始横から見た視点でゲームが展開する”横スクロール”RPGである。
左右どちらかにしか進むことができない、文字通りの一本道構造のため、迷宮の中を探索し、道に迷いながらも謎を解いていく・・・というような展開は一切合切存在しない。
つまり本作では必然的に戦闘シーンがゲームの中心となるわけだ。

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・ある種の潔さすら感じる横視点制

そして、『The Spirit Engine』の戦闘は、紛れも無く面白い。
本作の戦闘シーンについて順を追って見ていこう。

まず、ゲーム開始時に9人の主人公の中から3人を選んでパーティを組むことになる。
主人公達は大きく分けて3タイプの職業に分かれており、さらにそれぞれのキャラクターが得意な分野、苦手な分野を持っている。
ここでのキャラクターのチョイスがその後の戦術を大きく左右することになる。

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・手に持ったライフルで強大な敵を打ち倒すRifleman(ライフルマン)

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・魔力で敵を薙ぎ払い、また盾となる防壁を作り出すMage(魔法使い)

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・仲間の負った傷を癒し、聖なる力で死霊を払うPriest(聖職者)


本作が”横スクロール”RPGであることは先にも述べた通りだが、戦闘シーンにおいても横視点をぞんぶんに活かしたものとなっている。
画面を見るだけで、前列に立つキャラクターは敵の攻撃にさらされ、後列にいるキャラクターは攻撃を受けにくい、ということがわかるだろう。

tse_05.jpg
・戦闘中は隊列変更が可能。傷ついたキャラクターは後退させよう


『TSE』の戦闘における最大の特徴が「スキルチェーン」システムである。
各キャラクターは、単体攻撃、範囲攻撃、防御、回復などの様々な「スキル」を持っており、これを3つ繋げて1つのチェーンを作る。
チェーンは1キャラクターにつき3つ設定することができ、これをリアルタイムに切り替えながら戦いを繰り広げる。
一般的なCRPGの戦闘でのコマンド入力を数珠繋ぎにしたもの、と考えるとわかりやすいだろう。

また、スキルはそれぞれ発動するまでの時間が異なる他、Mana(マナ)ポイントを消費するスキルが存在する。
スキル発動に必要なManaが無い場合は、Manaが回復するまではスキルは発動せず、大きなタイムラグが生じることとなる。
強力な攻撃を一辺倒に繰り出すだけでは息切れしてしまう、というわけである。

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・例としてRiflemanでスキルチェーンを組み立ててみよう

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・まずはSpeedfire(連射攻撃)で敵を牽制し、

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・続けてSharpshoot(狙撃)の強烈な一撃をスタンバイする

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・スキルで消費したManaをRecharge(再装填)で補充して、

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・再びSpeedfireへ。スキルチェーンは循環するようになっている


他にも、CRPGではお馴染みの”属性”の概念も存在している。
『TSE』では、Normal(物理)、Magic(魔法)、Energy(エネルギー)の3種類の攻撃属性があり、敵によっては攻撃が効きにくかったり、あるいは完全に通用しないといった事がある。
また、敵となるモンスターの中には、Large(大型生物)、UnDead(死霊)の属性を持っているものもおり、これもまたスキルの効力に影響を及ぼす。
敵の弱点や攻撃パターンに応じてスキルチェーンを組み替え、使い分けていくことが戦闘を優位に進める上での鍵となる。

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・幽霊相手に銃弾を放ったところですり抜けてしまう。ここはPriestの出番だ


パーティの前に立ちはだかる敵キャラクター達も多種多様で、個性的な攻撃を仕掛けてくる。
いずれも一筋縄ではいかない手強い相手ばかりだ。

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・氷漬けにされて身動きが取れない!果たしてどう乗り切るか

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・中盤の強敵ボス、暗殺者Crossbone。素早い動きと必殺のダイビング攻撃はまさに脅威

『TSE』においては、戦闘がリアルタイムで進行することもあり、臨機応変に戦術を変えていかなければ勝利はおぼつかない。
少し気を許せばパーティは全滅まっしぐら、というシビアで歯ごたえのある戦闘を堪能できるだろう。

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・全滅してしまった…敵の高笑いのなんと腹立たしいことか!


なお2008年7月末には、4年越しの続編となる『The Spirit Engine 2』がリリースされている。
こちらはダウンロード販売ソフトであり、公式サイトより18米ドルにて購入可能だ。
『TSE2』では戦闘システムをはじめとして、あらゆる面に磨きがかかっており、より緊迫感のある攻防を楽しめる。

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・『The Spirit Engine 2』

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・ギリギリの戦闘が楽しめるのは相変わらず

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・新・スキルチェーン。より長いチェーンが組めるようになった


フリーゲームのコンピュータRPGと言えば『RPGツクール』で制作されたもの、あるいはRoguelikeなものが主流となっているが、『The Spirit Engine』は珍しい事にそのどちらにも当てはまらない。
また、アクションやシューター等のarcadeなゲームが多く制作される傾向のある海外フリーゲームの中においても、独自の戦闘システムを盛り込んだ意欲的なCRPGとして貴重な存在だと言える。

『The Spirit Engine』は、CRPGに当たり前のように存在している”戦闘シーン”の重要性を、改めて気付かせてくれる一本である。


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  1. 2008/09/05(金) 01:24:55|
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