自由遊戯黙示録

フリーゲーム/インディーズゲームをディープに語る

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Aquaria:遥か海を越えて

初めてこのゲームの存在を知ったとき、僕はその存在を他人に吹聴する気にはなれなかった。
このとてつもないゲームの事を知っているのが世界で自分だけなら、どんなに良かっただろうか、とすら思った。

だが、インディーズ・ゲームを愛し、そして見届ける立場にある以上、このゲームについて筆を取ることこそが、僕に残された最後の役目なのだろう。

思えば、僕が今日に至るまでこのblogを執筆し続けてきたことは、このゲームと出会う為にあったのではないか。
そう錯覚してしまうほどに、ただただ、衝撃だった。


その衝撃は、遥か海を越えてやってきた。
Bit Blot『Aquaria』
2007年開催の第9回Independent Games Festivalにおいて最優秀賞"Seumas McNally Grand Prize"を獲得した超大作である。

aquaria_01.jpg


『Aquaria』はフリーウェアではなく、ダウンロード販売されているゲームではあるが、
デモ版が無料でダウンロード可能であり、デモ版から製品版へのセーブデータの引き継ぎも行える。
価格は30USドル(日本円にして約3500円前後)と、インディーズ・ゲームの範疇で見ればやや高価だが、『Aquaria』のクォリティならば価格の高さは感じさせないだろう。
日本のゲーム・プレイヤー達にも、英語だ有料だというしがらみは抜きにして、どうか『Aquaria』を手に取ってみてほしい。

まずは百聞は一見に然りということで、動画を掲載しておこう。


First Trailer (From YouTube)


"Seven Minutes of Aquaria" Gameplay Trailer (From YouTube)


Final Trailer (From YouTube)





『Aquaria』でまず目を惹くのが、そのグラフィックだ。
ゲームの舞台となる深海の様子は、溜め息が出るほどに緻密に書き込まれており、色鮮やかさ、薄暗さ、生命感、不気味さといった様々なものが混在する幻想的な世界を描き出している。
また、静止した状態の画面でも十二分に美しいが、動き、つまりアニメーションの滑らかさも絶品である。

これでは見惚れない方が酷だと言う他はない。


プレイヤーは人魚の少女"Naija"を操作して海中を探索していく。
『Aquaria』では、全ての操作をマウスひとつだけで行うことができる。
例えば移動するには、進行方向にカーソルを向かわせ、マウスの左ボタンをクリックし続けるだけである。
このような簡単な操作ではあるが、美しい映像と動作が一体となり、スイスイと遊泳をしている感触が伝わってきて、ただただ泳いでいるだけでも楽しい。

aquaria_02.jpg
・主人公"Naija"(ナージャ)

aquaria_03.jpg
・Naijaはひとり行く。まだ見ぬ海を、自らのルーツを求めて


更に特徴的なのが「歌」のシステムだ。
Naijaは、外敵から身を守るためのシールドを張る、岩などの物体を念動力で動かすなど、様々な魔力の篭もった「歌」を歌うことができる。
「歌」の入力は右クリックでリング状に表示される音階をなぞることで行う。
少し慣れれば、まさに「歌うように」気持ち良く操作できるようになるだろう。
「歌」の力を上手く使って謎を解いていき、より先へ先へと探索を進めていくのが『Aquaria』の醍醐味のひとつだ。

aquaria_04.jpg
・奥に何かあるが、岩が邪魔をしていて進めない

aquaria_05.jpg
・そこで右クリック、歌を歌って…

aquaria_06.jpg
・岩を動かす!

また、「歌」の中にはNaijaを変身させるものもある。
代表的なのがエネルギー弾を発射することのできる形態「Energy Form」で、敵との戦闘を繰り広げる際に活躍する。
敵との戦闘もマウスのみの操作でありながら高いアクション性を実現しており、手に汗握る攻防を体験できる。

aquaria_07.jpg
・破壊の力への目覚め

aquaria_08.jpg
・巨大怪魚との戦い!力と知恵、そして勇気を振り絞れ!

「歌」をはじめとするゲームシステムは『Aquaria』の持つ美しい世界観によく調和している。
加えて、マウス1つで遊べる操作系、右下にミニマップがあるだけの画面構成、ストーリー展開は音声を中心としているなど、「シンプルさ」や「テンポを崩さない」ことに最大限の配慮がなされている。
重厚長大を目指したゲームにありがちな煩わしさを極力排除し”ゲームに集中しやすい”造りになっていて、非常に好感が持てる。




『Aquaria』は『メトロイド』や『悪魔城ドラキュラX』に代表される、横スクロール探索型アクションゲームのスタイルを踏襲している。
(海外では俗に"Metroidvania"―――"Metroid"と"Castlevania"を組み合わせた造語で比喩される)
また、海中を探索する、岩を動かすなどのパズル的な要素が存在するという点で『エコー・ザ・ドルフィン』との共通項を見出すこともできる。

だが、ここで語るべきなのは、そうした既存の商業ゲームとの単純な関係性の話ではない。


以前筆者は、『Aquaria』と同じく2007年開催のIndependent Game Festivalにて賞を獲得した『Everyday Shooter』というシューティング・ゲームについてのコラムを執筆した。
その中で、『Everyday Shooter』の持つスタイルや、クリエイターに対するインタビューなどから、『Everyday Shooter』はABA GamesやOMEGA『Every Extend』に対する「アンサー・ゲーム」である、と結論付けた。

ならば、そのゲームシステムや、ハイクオリティなグラフィックとサウンド、世界観などを総合的に考慮していったとき、この『Aquaria』は開発室Pixel、とりわけ『いかちゃん』『洞窟物語』に対する「アンサー・ゲーム」だといえる。


ABA Games、OMEGA『Every Extend』、開発室Pixel『洞窟物語』。
いずれも2000年代前半に巻き起こったインディーズ・ゲーム・ブームを飾った綺羅星のような作品だが、現在はそのブームも収束しきってしまった。
衰退の原因は幾重にも上るであろうが、その原因のひとつとして実は「『洞窟物語』が登場したこと」があるのではないか、と筆者は考えている。

『洞窟物語』が圧倒的な完成度を持ち、誰しもが『洞窟物語』こそが最高傑作であると思ったが故の影響は、決して良いものばかりでは無いはずだ。
プレイヤー達は目が肥えて、粗雑な面がありながらもアイデアに優れた佳作を評価しなくなった。
クリエイター達は作品の作り込みに大変な労力を要さねばならず、ゲームをリリースするペースが低下した。
あるいは『洞窟物語』の完成度を見せ付けられたがために自身の創作活動に挫折した者もいるかもしれない。
『洞窟物語』はインディーズ・ゲームを見る上でのひとつの基準となってしまい、
『洞窟物語』以降のインディーズ・ゲーム・シーンは、どことなく閉塞感を感じずにはいられない状態が続いている。


一言で言えば、『洞窟物語』を打ち破る作品が登場しなかったのである。

そう、

たった今、この瞬間までは。




2000年代前半のブーム以降、袋小路に入った感のある日本国内のインディーズ・ゲームの現状とは対照的に、
インディーズ・ゲームのスピリットは遥か海を越えて外国のクリエイター達に伝わり、そして今、彼らは自身の創造性を発揮しはじめている。
「音楽は国境を越える」と昔からよく言われているが、それと同じことが音楽だけではなくビデオゲームにも言えるのではないか、そう思わせるような事態が今、海外で起こっている。

それは『Aquaria』を見れば一目瞭然だ。
『Aquaria』が開発室Pixelの影響を受けていないと言えば、恐らく嘘になるだろう。
だが『Aquaria』は『いかちゃん』や『洞窟物語』の粗悪な模造品としてではなく、綿密な創意工夫が施され、独創性をふんだんに盛り込んだ、紛れも無い”本物”として存在している。
『Aquaria』には、インディーズ・ゲームの過去が、現在が、そして未来が詰まっている。


なにより、開発者のひとりでグラフィック担当のDerek Yuはインディーズゲーム情報サイト"TIGSource"の編集長を務めている、筋金入りのインディーズ・ゲーム・ファンなのである。
Derekは自身のコラムでインディーズ・ゲームに対する思い入れを赤裸々に綴っており、『Aquaria』の開発を"pregnant"―――「妊娠」とまで表現しているのだ。

インディーズ・ゲームを愛する者によって産まれた、最高のインディーズ・ゲーム。
果たしてこれ以上の祝福があるだろうか?





もう僕に、語るべき言葉は残されていないように思う。

だから、ただただ信じている。

『Aquaria』を。

この、インディーズ・ゲームの新たなマスター・ピースを。




・関連リンク

○スタッフ
Bit Blot
http://www.bit-blot.com/

Derek Yu (グラフィック担当)
http://derekyu.com/

Jenna Sharpe ("Naija"ボイスアクター)
http://www.freewebs.com/jennavation/studiodiary.htm


○IGF関連
2007 Independent Games Festival Winners:
http://www.igf.com/2007finalistswinners.html

4Gamer.net [GDC07#32]インディーズゲームの祭典,「Independent Game Festival」
http://www.4gamer.net/news/history/2007.03/20070310200837detail.html

Gamasutra - Road To The IGF Bit Blot's Aquaria
http://www.gamasutra.com/php-bin/news_index.php?story=11362


○インタビュー&コラム
GameDev.net - Interview with Bit Blot
http://www.gamedev.net/columns/interviews/bitblot.asp

Independent Gaming: Derek Yu Interview
http://indygamer.blogspot.com/2007/11/derek-yu-interview.html

GameVideos.com - Aquaria/Derek Yu '1UP Interview'
http://www.gamevideos.com/video/id/16812

Indie Game Developer's Podcast: Podcast Interview: Aquaria Developer and 2007 IGF Grand Prize Winner
http://www.indiegamepod.com/2008/01/podcast-interview-aquaria-developer-and.html

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  1. 2007/12/22(土) 11:09:43|
  2. 同人/インディーズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
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